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2006年1月20日

1枚の写真:父の人生を垣間みる

私の父の話。
最近の趣味はデジカメで写真を撮り、パソコンで分類したり印刷したりして楽しむことだ。
山登りにもはまっているので、当然ながら山の写真が多くなる。会心作を印刷し、それを家族に見せてくるのだが、その中に山とは関係のない1枚の写真があった。そしてその写真だけ日付が印刷されている。

3人の人物が写っている。仕事場の父(やや笑顔)と、笑顔の見知らぬ女性、そして女性が抱く赤ちゃん。父は小児科医だから、その女性と赤ちゃんはもちろん患者さんである。
私「この写真、日付が印刷されちゃってるぞ」、父「これは印刷されててもいいんだ」というようなやり取り。その写真については深く考えることなく会話は終了した。

父がまだ若かった頃、といっても自分が小学生低学年頃の話だが、赴任先で循環器疾患を専門に扱いはじめた頃にさかのぼる。
手術で助かる乳幼児もいれば、残念ながら努力も虚しく助からない子どももいたことだろう。たとえその場では助かったとしても、いつまた心臓が止まるのかわからないのだ。幼くして亡くなっていった子どもを何人も見てきたのだろう。右も左もわからない中ではじめて色々と苦労を重ねたのではないか。ついに胃潰瘍になって2週間も入院してしまったのだ。その記憶は自分もかすかにある。もちろん、その苦労について当時は知る由もない。そんな姿を見て私の母は、本当にこの人は大丈夫だろうか、この先も仕事をやっていけるのだろうかと不安になったそうだ。

そのようなドタバタの中で、無事に救うことのできた一人の子どもがいた。当初はそれでも長くは生きられないと判断されていたらしいが、術後の経過も良好で小学校、中学校と順調に進学し、高校を卒業して就職したという。どうやら毎年欠かさず父に年賀状で報告をしていたらしい。その後、どうなってしまったのかよくわからなくなったようだ。私も大学に入ってからはほとんど年賀状というものを送ってないしね。

ある日、父の仕事場に一人の女性が赤ちゃんを連れてやってきた。ここまで説明すればもうわかってるだろうが、先述した写真に写っていた女性とは彼女のことだったのだ。
予期せぬ来客にどれほど驚いたことだろうか。相当嬉しかったと思う。さっそく自慢のデジカメで撮影し、すぐに当時の同僚に添付してメールしたそうだ。
まだ父が駆け出しの頃になんとかして命を救った子どもが、長くは生きられないと判断されながらも予想を(もちろん良い意味で)裏切り、結婚し、子どもまでつくっていたのだった。
その女性からも色々なメッセージを読み取れる。本人もいつ心臓が止まるのかわからないことは承知しているだろう。それを承知の上で旦那さんは結婚をしたのだろうし、出産という危険にも了承してそれを乗り越えたのだ。しっかりとした信頼関係を築いて幸せに生活をしていることがわかる。
あの写真に写っている父は満面の笑みではないけれども、やや緊張した風ではありながらやさしい顔をしている。毎年彼女から年賀状をもらうことで、彼女が生きていることを確かめることができたのだ。そしてそれが父の医師として成長する過程で支えになっていたのだ。そうか、そういうことだったのか。
以上の顛末は後に母から聞いたものである。

さて、まだまだ青二才の自分だが、果たしてそのような一枚があるのだろうか。この先もそのような一枚を手にすることができるのだろうか。

このように、感傷的すぎるのかもしれないが、人生について考えさせる1枚の写真でありました。

投稿者 maji : 2006年1月20日 19:14


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コメント

人間と人間との間にある何気ない絆ですね。

助けられる命があれば、産まれてくる命もあるのですよね。

投稿者 黒子 : 2006年1月20日 21:14

 
う~ん……
やっぱりまじさんは僕より年上なんだなぁ
僕にはこういうものを書けませんよ。
今更ながらに自分の青さを自覚してしまいます。
僕は兄と父との戦争が最近になって終息したばかりなので、
こういう境地には達する事ができませんな。

人生について考えると言えば、
このようなサイトと本を見つけたのですが、
まじさんはご存知ですか?
ttp://homepage2.nifty.com/waterways/oquba/oqsearch.html
まじさんの今日のお話が生の喜びなら、
こちらは悲しみですな。
 

投稿者 文仲 : 2006年1月20日 21:55

素敵なお話ですね。

まじさんが小さい頃
お父様が胃潰瘍になってしまわれたのは大変だったでしょうけど、
優しい性格されているんでしょうね。
そういうお医者さんだと患者さんが安心して診て頂けると思います。

健康に留意して、お医者さんのためにも自分のためにも
いつか元気なベイビーを産めるよ〜に頑張りたいと思いました。

投稿者 のみや : 2006年1月21日 14:21

比較的仲の良い親子なのですよ。昔はけっこうきつく叱られたもんですがね。
自分も感動した話なので、うまく伝わったようでよかったです。

投稿者 MAJI : 2006年1月25日 21:21

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